子供に読ませたい日本のお伽話(後編)

 

梅雨冷えの肌寒い季節が続いておりますが、
みなさまはいかがお過ごしですか?

 

今月も、月に1〜2回の教育おすすめコンテンツ通信を、
歴史漫画/伝記漫画のサイトから登録いただいた方に、
発行して参ります。

 

 

今回は、前回に引き続き、大手ポータルサイトの調査で
人気上位に入った、「子供に読ませたい日本の童話」の中から
3つの作品を取り上げて、ご紹介いたします。

 

どうぞ、よろしくお願いいたします。

 

 

 

 子供に読ませたい日本のお伽話(後編) 3.かぐや姫

 

 

かぐや姫は日本で一番最初に作られた物語と言われています。

 

「今は昔、竹取の翁といふものありけり」
というフレーズを学生時代暗記をした記憶のある親御さんも
多いのではないでしょうか。

 

 

・・・

 

輝く竹の中から生まれてきたかぐや姫は、
竹取のおじいさんとおばあさんの元で美しく成長していきます。

 

その美しさが評判を呼んで、かぐや姫の元にはたくさんの若者が求婚しにやってきますが、
かぐや姫は天ばかりを見て、一向にその申し出を受けようとはしません。

 

やがてかぐや姫は「月に帰らなければならない」とおじいさんたちに告げます。

 

かぐや姫を連れて行かれたくないおじいさんは、
かぐや姫への守りを固めますがその願いも叶わず、
おじいさんに不老不死の薬の入った小さな袋を渡したかぐや姫は、
使者と一緒に月へと帰ってしまいました。

 

おじいさんはかぐや姫がいなければ長生きしても意味がないと、
小さな袋を山で燃やしてしまうのでした。

 

・・・

 

 

小さな子供にも楽しめるように作られたかぐや姫、
原作の竹取物語は、10世紀の頭の900年頃には、
既に生まれていた話といわれています。

 

その理由は、10世紀から11世紀の書物の中に「竹取物語」への記述があったためです。

 

「万葉集」の中でもかぐや姫への言及があったり、
あの「源氏物語」の中にも、「物語の出で来はじめの祖なる竹取の翁」という一文もあります。

 

はっきりした時代や、作者は長年不明とされてきましたが、
最近では、紀貫之が作者なのでは?という考察もあるそうです。

 

 

ところで、他の日本の童話にも見られるように、「かぐや姫」もまた、
日本各地や、日本以外にも似ている話が存在しています。

 

見たことのない空の上への憧れや畏怖の気持ちが混ざり合って、
世界の色々な場所で、かぐや姫のようなお話が作り出され、
後世にまで大切に語り継がれてきたのかもしれませんね。

 

話は戻りますが、かぐや姫のお話の最後に出てくる、
おじいさんが不死の薬を燃やしてしまった山は富士山だといわれています。

 

昔は富士山ではなく、「不死山」と書いていたそうです。

 

「富士山を見ると100日寿命が延びる」などという話も聞いたことがありますが、
こちらも竹取の翁が燃やした、不老不死の小さな袋のせいかもしれませんよね。

 

 

 

 4.浦島太郎

 

 

長年離れていた場所に久しぶりに出かけてみると、
まるで見違えるようにその場所は栄えていた、
そんな時に思わず口から出てしまうのは、「ウラシマ状態…」

 

これはもちろん、「浦島太郎」の話になぞらえて出来た言葉です。

 

 

・・・

 

心の優しい漁師の青年浦島太郎は、
ある日浜辺で亀が子供たちに意地悪をされているのを助け出します。

 

亀はお礼にと浦島太郎を竜宮城に招待し、太郎は乙姫様たちに歓迎され、
夢のように素晴らしい竜宮城での数日間を愉快に過ごしていましたが、
やがて年老いた母親や、地上の事が心配になり帰ることになりました。

 

浦島太郎は地上に戻ってきましたが、そこはすでに太郎の知っている者はおらず、
村もまったく知らない村のような風景になってしまっています。

 

 

途方にくれた浦島太郎は「もし困ったことになったらこの玉手箱を開けなさい」と、
乙姫様からお土産に渡された玉手箱を開けてみますが、
途端に煙がもくもく出てきて、浦島太郎はおじいさんになってしまいました。

 

竜宮城で過ごした1日は地上では100年、
浦島太郎が帰るまで、地上では300年も経ってしまっていたのでした…。

 

・・・

 

 

「浦島太郎」の原型は「風土記」「万葉集」「日本書紀」にある、
「浦島子」だと言われています。

 

その後江戸時代の初めに発表された「おとぎ草子」の中のひとつとして紹介され、
物語や童謡として親しまれてるのが、
現在みんなが知っている「浦島太郎」なんですね。

 

 

ところで、この「浦島太郎」のお話には、現在でも解明できていない謎が残っています。

 

それは玉手箱についてです。

 

 

上記でご紹介したあらすじでは、「困った時に開けなさい」と、
乙姫様は浦島太郎に玉手箱を渡していますが、
他にも有名なものとして、乙姫様が「決して開けてはなりません」と言って、
玉手箱を太郎に手渡したパターンのお話もあります。

 

なぜ乙姫様は、開けるとおじいさんになってしまうような玉手箱を、
浦島太郎に渡したのでしょうか。

 

何百年も経った地上に太郎を帰すとなった時に、彼が過ごしてきた時間も返すことで、
彼を自然の摂理の中に戻してあげたかったのか、
それとも「開けてはいけないよ」と魅惑的な言葉を囁くことで、
浦島太郎をを試してみたかったのか…。

 

色々な解釈があるようですが、どれも推測の域を出ておらず、
今のところ浦島太郎と玉手箱については謎に包まれたままのようです。

 

皆さんはこの謎を、どのように思われますか?

 

 

 

 5.笠地蔵

 

 

最後にご紹介するのは「笠地蔵」、
地方によって「かさこ地蔵」とも呼ばれる日本の童話です。

 

 

・・・

 

雪深い地方に、年も暮れるというのにお餅さえ買えないような、
年老いた貧しい夫婦が住んでいました。

 

せめて編んだ笠を町で売ろうとおじいさんは出かけていきますが、結局ひとつも売れません。

 

その帰り道、雪をかぶっていたお地蔵様をおじいさんはかわいそうに思い、
持っていた笠を被せ、ひとつ足りなかった分は自分の被っていた手ぬぐいをかけてあげました。

 

 

新年を迎える準備も出来ないまま帰ってきたおじいさんですが、
話を聞いたおばあさんは、「良いことをしましたね」と言うだけで責めたりはしません。

 

やがて夜も更けふたりが寝静まった頃、突然外で重い何かが落ちた音がし、
老夫婦が驚いて扉を開けると、そこにはお餅や米俵を始めとする食べ物や財宝が落ちています。

 

遠くを見ると、笠を被ったお地蔵様と、おじいさんの手ぬぐいを被ったお地蔵様が、
元いた場所へと帰っていく姿が見えました。

 

老夫婦はお地蔵様からの贈り物のおかげで、良い新年を迎えられました。

 

・・・

 

 

「笠地蔵」は、勧善懲悪でも、立身出世のお話でもありませんし、
心がざわめくような冒険譚でも、美しいお姫様が出てくるお話でもありません。

 

それなのに、現在まで大事に語り継がれてきたこの童話の魅力とは、
一体どこにあるのでしょうか。

 

 

ここからは個人的見解ですが、「笠地蔵」は、読んだあと私たちに、
優しい気持ち、思いやりの気持ちをを与えてくれるように感じます。

 

自分も寒いのに笠や手ぬぐいをお地蔵様にかけてあげるおじいさん、
売れなかったばかりか、売り物そのものをお地蔵様にあげてしまっても、
怒らず優しくおじいさんの行為を受け止めてくれるおばあさん。

 

良いことだけで人は食べてはいけませんが、この老夫婦の心はとても豊かです。
そしてその優しさは、救いとなってふたりの元に返ってきます。

 

 

日本の童話は、「鶴の恩返し」などのような教訓めいたものも多く存在しますが、
「笠地蔵」は教訓と言うよりも道徳的なものなのかもしれませんね。

 

また最後のお地蔵様の帰っていくシーンですが、
石で出来た笠や手ぬぐいをかぶったお地蔵様が揺れながら帰っていく姿を想像すると、
そのユーモラスな動きに心がほっこりするようです。

 

「笠地蔵」は寒い寒い年の瀬にぴったりな、心温まる日本の童話の代表作と言えるでしょう。

 

 

 

 日本の童話のもともとの意味とは…

 

 

日本の童話はお伽噺とも呼ばれますが、
このお伽噺が子供のために読まれるようになったのは、明治以降なのだそうです。

 

 

お伽噺の「伽」というのは、話を聞いたりしたりすることで、
相手の退屈を紛らわせるといった意味や、寄り添うといった意味があります。

 

昔は将軍や大名の退屈を和らげる、御伽衆といった職業もあったように、
もともとお伽噺は、大人のためにあったものなのですね。

 

 

そう考えると、日本の童話には「めでたしめでたし」と終わるものより、
悲しい別れだったり、辛い結末だったりと、
どこか深く考えさせられる内容のものが少なくないことも頷けます。

 

 

皆さまも、何かの機会に、日本の童話にもう一度触れてみてはいかがでしょうか。

 

もしかしたら子供の頃には気づかなかった、新しい発見があるかもしれません・・。

 

 

 

 次回は・・・

 

 

次回は、海外の児童文学紹介を予定しています。

 

最後までお読み下さり、どうもありがとうございました。
次回もどうぞよろしくお願いいたします。

 

 

 

 

今回の本
かぐやひめ (世界名作ファンタジー)
うらしまたろう (日本傑作絵本シリーズ)
かさじぞう (松谷みよ子むかしむかし)

 


 


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