子供に読ませたい日本のお伽話(前編)

 

しとしとと連日降りしきる雨にあじさいが咲きはじめましたが、
みなさんはいかがお過ごしですか?

 

私は時間を見つけては、読書しています。

 

雨音を聞きながらの読書はなんとなくゆったりと出来、
いつもより本の中に集中できる気がしますよね。

 

さて今回は、『子供に読ませたい日本のお伽話(前編)』
と題して、昔から人々に伝えられてきた民話やお伽噺、
いわゆる、「日本の童話」についてご紹介させていただきます。

 

 

 

 日本のお伽噺とは・・?

 

 

日本の童話の多くは室町時代末期から江戸時代にかけて
作られたものが多いといわれていますが、その中には、
「日本五大お伽噺」というものが存在します。

 

「桃太郎」「はなさか爺さん」「舌きりすずめ」「さるかに合戦」「かちかち山」
これらが「日本五大お伽噺」、と呼ばれる日本の童話です。

 

 

「桃太郎」は日本の童話の直球ど真ん中!といった雰囲気がありますが、
「かちかち山」や「舌きりすずめ」あたりは、ちょっとした変化球のような童話
といった気もしますよね。

 

これらがいつどこで誰に、「五大お伽噺」と定められたかは良く分かっていないようですが、
どの童話も「善を勧め、悪を懲しめる」、「勧善懲悪」をテーマにしたお話ばかりです。

 

 

その理由は江戸時代、徳川幕府をトップとした権力図を維持するために、
藩学や寺子屋などで、「権力を持ったもの、目上の者を敬うように」、
といった教育を行われていたということに深く関わりがあります。

 

町人も通う寺子屋でも、儒教的な道徳を扱った、
教科書のようなものが配布されていたといいますので、
江戸時代の政策によって、この、「五大お伽噺」と呼ばれるものが、
町人たちにも支持されるようになったのかもしれません。

 

 

また「目上の者を敬って生きる」という表面的なものだけではなく、
当時の世相に不安や理不尽さを感じながらも、
「いつか童話のような幸せなことが待っているかもしれない」、
といったような未来への夢や希望を託し、
親が子に、子ががまたその子にと、日本の童話は語り継がれていった、
といったような見方も出来るようです。

 

当時の人々の「今を生きること」に対しての哀愁を感じられる話ですが、
その中にも「人の逞しさ」を感じることが出来て、救われた気持ちになります。

 

 

 

 1.桃太郎

 

 

桃太郎は先ほどご紹介した五大お伽噺のひとつです。

 

小さなお子さんには一番初めに聞かせてあげる、
日本の童話に選ぶ人も多いと聞きます。

 

 

・・・

 

どんぶらこどんぶらこと流れてきた桃を拾ったおばあさんが、
おじいさんと桃を割ってみたら、男の子が生まれました。

 

桃から生まれた男の子は桃太郎と名づけられ、
大きくなると鬼退治に、きび団子を持って鬼が島へと向かいます。

 

その途中犬、猿、雉をお供にし、みんなで力を合わせ鬼退治を成し遂げ、
金銀財宝を持っておじいさんおばあさんの待つ村へと帰りました。

 

・・・

 

 

皆さんご存知の通り、桃太郎は余りにメジャーな日本の童話ですよね。

 

ところで、この桃太郎伝説の元となったお話は、
室町時代よりも前からあったものといわれています。

 

 

その理由はいくつかあるようですが、里見八犬伝の生みの親である滝沢馬琴は、
鎌倉時代初めに作られた「保元物語」に収録されている話に似たような話があるため、
その話に似せて、「桃太郎」が生み出されたのでは?と考えていたようです。

 

また岡山県のイメージが強い桃太郎ですが、驚くことに、
北海道から沖縄県まで色々な地域で、近い物語が語り継がれています。

 

きび団子を持っていく代わりに、粟や稗のお団子を持っていく桃太郎がいるのは高知県、
お供が、犬、猿、雉ではなく、まるでさるかに合戦とミックスされたように、
石臼や針、馬の糞、百足や蜂や蟹をお供につれて行った桃太郎がいるのは広島県と愛媛県、
さらには香川県には桃太郎が女の子だった、という説も残っているそうです。

 

芥川龍之介や菊池寛、北原白秋や正岡子規など、日本を代表する作家や詩人たちも、
伝説を題材にした作品を発表しているという桃太郎…、

 

 

これらのことを思うと、「桃太郎」は、最も愛されている「日本の童話」のひとつ、
と、言えるのかもしれませんね。

 

 

 

 2.鶴の恩返し

 

 

五大お伽話には入っていませんが、大手ポータルサイトが実施したアンケートで、
「子どもに読ませたい日本童話ランキング」の1位に選ばれたのが、「鶴の恩返し」です。

 

 

・・・

 

寒い雪の日、わなにかかった鶴を助けた老夫婦の元に、
ひとりの美しい娘がやってきます。

 

なかなか雪が降り止まない中、老夫婦の身の回りの世話などをして、
まるで本当の娘のように一緒に生活をするようになった美しい娘は、
ある日、「これから機を織ります。その間決して中を覗かないように…」
と言って、美しい布を織ります。

 

その布が余りに美しかったこと、
機を織るたびに娘が余りにやつれていくことが気になった夫婦は、
とうとう約束を違えその姿を見てしまいます。

 

そこには一羽の機を折る鶴がいました。
娘は老夫婦に恩を返しに来た鶴だったのです。

 

姿を見られた美しい娘は悲しそうに鶴に戻り、空に舞い戻り帰っていきました。

 

・・・

 

 

こちらも桃太郎同様に、日本各地に似ている話が存在しているようです。

 

恩を返しにきた娘が、「老夫婦の娘になる」という全国的に有名な話から、
「鶴を助けた青年の嫁に来る」「嫁に来て、子供も成す」という、
一見「羽衣伝説」にも近い話までがあります。

 

 

このように、地方によって伝わる童話には少しずつ変化が見られるようですが、
一般的に子供の頃私たちが絵本などで目にした「鶴の恩返し」は、
戯曲作家の木下順二が1949年に発表した、「夕鶴」という戯曲を元に作られた話です。

 

青年の「ひょう」、鶴の「つう」の愛情と欲を表現した「夕鶴」を、
子供の頃国語の教科書で読んだ人もいらっしゃっるのではないでしょうか。

 

 

今、子供たちのためにある「絵本」などに描かれている「鶴の恩返し」は、
ひょうを老夫婦に変化させ、小さな子供たちにもわかりやすいようにと、
愛のストーリーから、恩返しのストーリーへと形を変えているようです。

 

一見「情けは人のためならず」とも読める「鶴の恩返し」は、
大切な約束を守ることが出来なかった、
人間の弱い部分を描いた作品とも読み解かれているようです。

 

 

 

 温もりと一緒に…

 

 

「桃太郎」や鶴の恩返しを始め、「浦島太郎」や「かぐや姫」に「金太郎」、
子供の頃目を輝かせて聞いていた日本の童話は、
大人になって読んでみると、当時とは違う読み取り方もできますよね。

 

 

とはいえ、「むかしむかし…」と始まる日本の童話は子供たちのもの、
素直にのびのびと、感じ取ったままに楽しんでもらいたいものです。

 

私の場合は日本の童話を思い出してみると、お話の内容の興味深さだけではなく、
読み聞かせてくれた、母や祖母たちの温かい声も一緒によみがえってきます。

 

 

皆さんもぜひ、大人になっても忘れない優しい思い出を、
お子さんにたくさん作ってあげてください。

 

 

 

 次回は・・・

 

 

次回は、子供に読ませたい日本のお伽話(後編)と題して、
他の三作についてご紹介します。

 

だいたい、6月半ばくらいの配信を予定しています。

 

 

最後までお読み下さり、どうもありがとうございました。
次回もどうぞよろしくお願いいたします。

 

 

 

 

今回の本
ももたろう (日本傑作絵本シリーズ)
つるの おんがえし (いわさきちひろの絵本)

 

ももたろう (はじめてのめいさくえほん)
つるのおんがえし (はじめてのめいさくえほん)

 


 


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